はじめに
こんにちは^^
私は、
整形外科クリニックで外来リハビリテーションに携わっている
理学療法士のリハぞうです。
今回は、理学療法士がエコーを使うべき理由について解説していきたいと思います。
超音波エコー(超音波診断装置)は
医師が妊婦健診や、がん検診などで
使うイメージがほとんどですよね。
中でも、運動器エコーの分野は近年、整形外科医や総合診療医の間で大流行しているそうですが
理学療法士の間ではまだまだ浸透していないのが現状では無いでしょうか。
そこで今回は、整形外科クリニックで運動器エコーを勉強しながら
日々の臨床にも活用している私リハぞうが
“PT目線で考える運動器エコーの魅力”について
お伝えしていきたと思います。
では早速いきましょう!
運動器エコーで分かること
エコーを活用することによって、
・筋、神経、動静脈、靭帯などの走行
・血流評価(ドプラモード)
・筋断面積、筋長、筋輝度などの筋機能
・組織の硬さ(エラストグラフィ)
・fascia(筋膜)の滑走性
など
あらゆる組織の動態が
“リアルタイムで”観察・評価できます。
さらに、運動器エコー最大の魅力として
動的な評価が可能になります。
私が、実際に臨床でエコーを活用し動的評価を行う例としては
・膝屈伸時のIFP(膝蓋下脂肪体)の動態変化
・足関節の動きに伴うアキレス腱とKFP(アキレス腱下脂肪帯)の滑走性
・ATFL(前距腓靭帯)の徒手的ストレスによる動揺性の評価
などがあります。
もしもこれらを評価する際に、触診や問診・理学療法評価などに加えて+αでエコーを活用することができれば
目で見て、より正確に組織の状態を確認することができます。
PTでも扱えて、かつ動的評価が可能な点は他の画像検査には無い強みですね!
断層解剖学の知識が身に付く
理学療法士のエコー活用方法は
必ずしも評価や治療の目的による使用では無く解剖学の学習ツールとしても活用することが出来ます。
教科書で解剖学の勉強をするのとは違い
エコーを当ててリアルタイムで組織を観察することで
教科書で見ている2次元での理解では無く
組織同士の位置関係(奥行き、重なり、深さ)など
3次元で解剖学の知識を深めることができます。
筋・神経の走行は必ずしも教科書通りでは無い!
私がエコーを勉強し始めた頃に感じた、最初の発見はこれでした。
「全然教科書通りじゃないじゃん!!」
人体は全然教科書通りじゃなかったんです。
もちろん、大まかな位置関係や走行はおおむね一致しています。
ですが、エコーを勉強し始めて
「あれ?今まで〇〇筋だと思って治療してたあの筋肉は実はここなの!?」
「〇〇筋って実際こんなに大きいの!?」
「〇〇神経ってここの筋間をこんな深さで走行しているんだ!」
など、画面越しではありますがエコーを通して人体の内部を目で見て確認することができるので
知ったつもりになっていた解剖学でも新しい発見が多く、練習を重ねていくことで結果として触診技術のアップに・治療への応用に繋がりました。
触診・治療に自信が持てるようになる
エコーを使いこなすことで
触診や治療に自信が持てるようになります。
正しく触診できていますか?
私自身、エコーを練習し始めたことで
気づいたことがあります。それは、
今まで正確に触診できていたわけでは無く
触診出来ている“つもり”になっていたことです。
エコーを勉強し始めてからというもの、
3次元で組織の位置関係を頭に入れておくことで
エコーを当てていなくても
常にエコー上の画像を頭で想像しながら
触診・治療をするようになりました。
様々な部位に当てて大まかな位置関係を把握しておくことがポイントです!
クライアントへの説得力が増す
これは日々の臨床でかなり感じることが多いです。
我々理学療法士は、患者さんに
患部の状態について説明することが
多いですよね。
「ここが硬いせいで動きが悪くなっています」
「この筋力が弱いので筋トレをしましょう」
「まだ炎症が引いてなさそうですね」
このような説明をすることがあります。
この時に+αでエコーを活用できたら
どうでしょうか。
上記のケースであれば、
筋の滑走、筋収縮、血流動態(炎症の確認)は
エコーで確認することができるので
実際に患者さんにも画面を見てもらいながら
説明することで
より根拠のあるフィードバックを行うことができると考えています。
説得力が増しますね!
ラポール形成に繋がる
説得力のある説明ができることで
患者さんとのラポール形成(信頼関係の構築)
に繋がると考えています。
皆さんも経験あると思いますが
患者さんの中に
“自主トレーニングの提案”をしても
なかなか自宅で取り組んでくれない
患者さん、いますよね。
なんでこの人、やってきてくれないんだ….
あなたのためを思って、言ってるのに….
と思いたくなるところですが
これ実は
自主トレをやってこない患者さんが悪いのではなく
あなた自身に問題があるのかもしれません。
これについて考えた時に、出た私の答えとしては、患者さんが
「自身の現在の状態をよく分かっていない、そして
自主トレの“必要性”を理解していない」
ことにあると思います。
「ここがこうなっているから、状態がこう変化して、痛みにつながっている。それを改善するために、このような目的でこの運動をする必要がある」
このように、目的をはっきりさせて理解してもらうことで
自主トレの“重要性”を理解してもらえます。
そこには、説明の「分かりやすさ」も重要になってくるので
その手段として、患者さんへの説得力を倍増させるエコーは実用性がかなり高いと思います。
ただし、デメリットも…
ここからは理学療法士がエコーを使う上での
デメリットを紹介したいと思います。
十分な解剖学の知識が必要
大前提として、
筋の起始停止、組織同士の大まかな位置関係など基礎的な解剖学の知識が必要です。
そして、
エコー画面は白黒で、正直最初のうちは
画面を見ても何が何だか分からないため、
解剖書(アトラス、ネッターetc…)が必須です。
ポイントは、プローブを走査しながらその都度解剖書を確認することです。
解剖書を常に近くに置いて、エコー画面と解剖書を往復するように見ることで、一層理解が深まります。
練習を重ねるうちにエコー画像に目が慣れてきて見たい組織を容易に判別することができるようになります。
プローブ走査の習熟度によって差が出てしまう
エコーはプローブ走査が難しく、鮮明に組織を描出するまでに沢山練習を重ねないといけないため
検者依存度が高いと言われています。
同じ組織を映すのにも、手元の僅かな微調整で見え方がかなり変わって来ます。
上手くプローブを走査し、鮮明なエコー像を描出するのは難しいですが、
一度手元のコツを掴めば応用が効きやすく、あらゆる部位において臨機応変に組織を描出することが可能になります。
練習あるのみ!
本記事で最も伝えたいたった1つのこと
私が本記事で最も伝えたいメッセージは
「とにかく、ただひたすらエコーに触れましょう!」
これです。
尊敬している整形外科医の先生が何度も何度も口にしている言葉で、私自身も勉強していく中で、かなりこれを実感しています。
どんなにセミナーや本で勉強しても実際に触らなければ意味がありません。エコーに触れることで、初めて分かることがあります。
「百聞は一見にしかず」
まさにこれです。
エコーに触れ練習を重ねることで自分自身の武器になり、引き出しが増えることで
理学療法士としての価値が高まると信じています。
おわりに
運動器エコーの可能性を感じていただけたでしょうか?
“理学療法士だからこそ、エコーでできることはある”と思います。
目の前の患者さんのために、
自分自身の理学療法士としてのスキルアップのために、
日々の臨床の質をより良くしていくために、
ぜひ、運動器エコーを活用していきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
可能性は無限大!
参考引用文献
本記事を作成するにあたり、下記の論文を参考にさせて頂きました。
平山和也,理学療法における超音波エコーの活用,理学療法の歩み,2022,33巻,1号