はじめに
こんにちは。
今回は「胸郭出口症候群(TOS)」について解説します。
学生時代、
名前を耳にしたことはあると思いますが
・病態についてよく分からない
・どんな評価・治療をすれば良いか分からない
こんな方は多いのではないでしょうか?
今回は「胸郭出口症候群」の病態・評価・治療について
“分かりやすく”解説していきます。
それではいきましょう!
病態
まずは「胸郭出口症候群(TOS)」についての定義を理解しましょう。
胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん、英thoracic outlet syndrome)は、腕神経叢と鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が胸郭出口付近で頚肋、鎖骨、第一肋骨などや前斜角筋、中斜角筋、小胸筋などに圧迫・牽引されることで起きる症状の総称である。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
圧迫型・牽引型に分けられますね。
このうち牽引型が“運動療法の適応になる”
と言われています!
分類
胸郭出口症候群には、以下のように分類される。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
これらを総括する概念として1956年にPeetらによって提唱されました。
早速、
なかなか聞き慣れない言葉が多く出てきましたが、ここでは
「胸郭出口症候群」と言っても様々なタイプに分けられるんだな……
と理解してもらえればOKです^^
ここから少し踏み込んでいきます。
好発部位
胸郭出口症候群では、発症に関する主なポイントとして
3つのポイントがあります。
以下の図に沿って説明します。
①斜角筋隙(前斜角筋と中斜角筋と第一肋骨のつくる間隙)
②肋鎖間隙部(鎖骨および鎖骨下筋と第一肋骨との間隙)
③小胸筋間隙部(烏口突起下で、小胸筋と胸壁の間隙)
この順番で腕神経叢が通過し上肢に向かいますが
これら3つのポイントで牽引や圧迫が起こりやすくなります。
3つのポイントを押さえておくことが大切です!
理学療法評価
では、先ほど紹介した3つのポイントを
どのように鑑別するのでしょうか。
ここからは評価について解説します。
代表的な整形外科テストといえば、
・Adson test
・morley test
・eden test
・Wright test
・Roos test
などがあります。
学生時代、国試勉強で必死に覚えたのが
懐かしいですね。
しかし!
各検査の方法、結果の解釈、理解できていますか?
これらの各種検査を
試験で点を取るために名前だけ覚えて
検査ごとの結果から得られる解釈を
理解できていない・もしくは忘れている
方は多いのではないでしょうか?
・検査の名前自体は覚えているんだけど…
・検査方法と名前が一致しない!
そんな方もいると思います。
それぞれの検査にもちろん意味があります。
次項で詳しく解説していきますので
復習も兼ねて、再確認していきましょう。
各種徒手検査の意味づけ
TOSの症状は
しびれ・脱力・上肢の痛みなど様々です。
そのため画像検査に加えて
正確な徒手検査が重要となります。
ここから各種徒手検査を一つずつ確認していきます。
Adson test
【方法】頭部を患側に回旋し、息を止め橈骨動脈の拍動を診る
【陽性】拍動が減弱・消失する
【陰性】不変
Adsonテストでは頭部の回旋により斜角筋隙の狭小が起こるため、
陽性の場合斜角筋群の関与を疑うことができます。
morley test
【方法】鎖骨上窩を圧迫し疼痛や放散痛を確認する
【陽性】圧痛あるいは放散痛
【陰性】不変
morley test 陽性の場合、斜角筋症候群を疑いますが、
頸腕症候群や頸部脊椎症でも高率に陽性となるため特異性に乏しいと言われています。
eden test
【方法】上肢を後下方に牽引し橈骨動脈の拍動を診る
【陽性】拍動が減弱・消失する
【陰性】不変
肋鎖間隙症候群を疑う
eden testは「気をつけ姿勢テスト」と呼ばれることもあります。
肋鎖間隙を圧迫する肢位になるため陽性の場合肋鎖間隙症候群を疑います。
Wright test
【方法】肩関節外転・外旋位で橈骨動脈の拍動を診る
【陽性】拍動が減弱・消失する
【陰性】不変
Wright testの検査肢位では小胸筋が烏口突起を下方に引き
肋鎖間隙や小胸筋-胸壁間で神経・動静脈の圧迫が起こるため
過外転症候群を疑います。
Roos test(Roos3分間挙上負荷試験)
【方法】Wrightテストの肢位で手指の屈曲・伸展を
3分間繰り返す
【陽性】疼痛やしびれの出現
【陰性】不変
過外転症候群を疑う
Roos testでは時間的評価が加わることで症状の重症度を判定することができます。
Wright test同様、陽性の場合過外転症候群を疑います。
以上が代表的な徒手検査になります。
治療
ここからはTOSの治療について紹介していきます。
治療の最終目標
まず大前提として、治療の最終目標は
「腕神経叢の緊張を緩和すること」にあります。
↓
では、そもそもなぜ腕神経叢の緊張が高まるのか。
腕神経叢を過緊張状態にしている要因の一つとして
肩甲骨のマルアライメントが考えられます。
マルアライメントとは、
アライメント異常、つまり「正常なアライメントから逸脱している状態」を言います。
例えばこんな感じ。↓
TOSの牽引型では、肩甲骨が外転・下方回旋位を呈することが多いと
言われています。
肩甲骨の位置異常が続いたまま
普段通りの生活を送ることで
過度な腕神経叢への牽引ストレスが
繰り返し加わります。
↓
肩甲骨の外転・下方回旋位はなぜ起こるのか?
では、肩甲骨の外転・下方回旋位を呈する要因は何なのか。
考えられる要因は様々ですが
↓
・前胸部(小胸筋)のタイトネス
・僧帽筋中部・下部線維の筋力低下
・肩甲挙筋や菱形筋での代償動作
・胸鎖関節や肩鎖関節の拘縮
などが考えられます。
また
肩甲骨外転・下方回旋・前傾位は
典型的な猫背姿勢であるため
総合的に
猫背姿勢の修正が重要となります。
具体的な治療プログラム
具体的な治療内容としては
ストレッチング・リラクゼーション
…小胸筋、肩甲下筋
⬇︎
筋の柔軟性改善を目的として行う。
徒手的操作によるダイレクトストレッチングや
Ⅰb抑制・相反抑制を用いたリラクゼーションを行う。
関節モビライゼーション
…肩鎖関節、胸鎖関節
⬇︎
拘縮除去を目的として行う。
徒手的な操作により前胸鎖靭帯や肋鎖靭帯、肩鎖靭帯を伸張する。
筋力エクササイズ
…僧帽筋(中部線維、下部線維)、腱板筋群
⬇︎
筋力強化・筋出力改善を目的として行う。
患者は側臥位で、上肢を把持しながら肩甲骨を誘導し
収縮誘導訓練を行う。
☆ポイント☆
肩甲挙筋の収縮による代償を防ぐ。
などが挙げられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は胸郭出口症候群(TOS)の病態・評価・治療について
解説しました
今後TOSの患者さんを担当する際は
今回の内容をぜひ参考にしてみて下さい。
ありがとうございました。